日本学術振興会 特別研究員(DC1)のユモクです。
去る9月27日(月)に、来年度採用分の日本学術振興会 特別研究員(以下、学振)の一次審査の結果発表がありました。
博士課程に在籍している、もしくは博士課程をめざす修士2年の皆さんの多くが、学振に応募していたと思います。
「学振って何?」という人は、以下の記事をどうぞ。
結果発表後数日間、僕の周りやTwitterの反応を見ていると、悲喜こもごも。
今回は採否に関わらず、採用結果をどう受け止めるべきかということの私見を書いていきたいと思います。
日本学術振興会 特別研究員への採用が全てではない
学振の採用は、研究者としてのキャリアとしても大きなものであることは事実だと思います。
しかし、採用歴がなくとも立派な研究者となる人は数多くいます。
採用率が示すように、採用されない人の方が圧倒的に多いものです。
また、採用された時点がピークとなってしまう人もいます。
当たり前の話ですが、学振に採用されなかったけど研究成果を積み重ねて行ける人もいれば、採用されてもその後思うように行かない人もいます。
採用=研究者人生が薔薇色になる、という訳ではありません。
採用されなかったからといって、研究者適性がない訳ではありません。
学振の審査結果で研究者適性を推し量ろうというのはやめた方が良いと思います。
ただし、投稿論文の査読結果や日頃の研究発表の結果も芳しくなく、それに加えて自分の研究者としての欠点を自覚できていない場合は、厳しいことを言うと研究者に向いていない可能性があります。
ポイントは、査読や発表結果如何より、欠点が自覚できているか否か。
今の実力は関係ないです。足りない能力は伸ばせばいいので。
ただし、欠点がわかっていないと改善のしようがありません。
欠点が自覚できない人はなかなか成長できません。
同じ過ちを繰り返すならまだしも、迷走の末、逆走し始める人もいます。
自分の研究者としての資質に悩む人は、自分を客観視して評価してみること、実際に第三者に忌憚ない意見を求めてみることをオススメします。
経済的事情で学振の採用が必要だったという人もいるかもしれません。
経済的事情ならどこまで問題になるか、個々人によって大きく異なる(奨学金で賄える目処が立つかなど)ので、「お金がなくてもやる気があるなら進学しなよ!」と気軽には言えません。
20代中盤に差し掛かる頃の進路決定でもありますし、綺麗事だけを言ってられません。
ただし、博士課程学生への経済支援は学振だけではありません。
特に今年度より、文科省が経済支援の拡充を始めています。
博士課程学生でも、最低限度の生活費を賄うことができる学生は増えて行くでしょう。
また、もし来年度の進学は諦めざるを得ないとしても、一度社会に出てお金を貯めて大学院に戻ってくるという手もあります。
そして、審査結果に関わらず、博士課程の進学に迷っている人はとことん悩んで判断してください。
これは採用内定を勝ち取った人にも言えます。
「博士課程は悩むなら進学すべきでない」という言説も根強いような茨の道です。
少しでも迷いがあるなら、「もう就活に切り替えるには遅い」などとは言わず、じっくり進路を考え直すことを強くオススメします。
何より僕は、採用されたからそのまま進学を選んだパターンですが、これで良かったのか、との悩みがずっと付き纏っています。(この件については近く記事を出す予定です)
一次審査のみで内定をもらえた人はどうすべきか?
既にやっていることを祈りたいですが、まずはお世話になった関係者各位にお礼の報告をしましょう。
そしてしばらくは喜びに浸っていいですが、そろそろ兜の緒を締め直しましょう。
勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議な負けなしです。
採用という勝利は、不思議なものだったのかもしれないというくらいの低い姿勢でいましょう。
ただでさえ、学振の採用者は周囲からの期待値が上がります。それに応える活動をしていかなければなりません。
(博士課程への入試が改めてある人は)博士入試で落ちないようにしっかり修論書きつつ、それ以上の勉強も進めましょう。
一つ忠告しておきますと、DCでもらえる月額20万円は、余裕のある暮らしができるほどのものではありません。
詳しくは下記の記事でまとめていますが、特に一人暮らしの場合はなかなか厳しいです。各種税金や社会保険料で結構持っていかれます。
調子に乗って今から散財したりしないように!
二次審査に進んだ/不採用だった人はどうするべきか?
不採用の人だけでなく、二次審査に周った=まだ採用の可能性はある人も、来年度以降を見据え、「業績を意識した研究活動」をしましょう。
博士課程のうちに業績にこだわりすぎることには賛否ありますし(業績は大事だが、学生の時間を使って見識を広める意味で広い領域の学習をすべきという人もいる)、学振の採用に業績が関係するか否かも意見が分かれますが、業績は「無いよりはプラスになる」と考えるべきでしょうし、その先の就職を考えると必須です。
特に単著や筆頭著者の査読論文にチャレンジしましょう。
査読なしの学会発表や、筆頭ではない共著による業績は、業績の水増しとして捉えられるのか、そのような業績しかない、またはそれがほとんどの人は、僕の周りでは学振にほとんど採用されていませんし、就活でも苦労しています。
査読・招待なしでの学会発表は「自分が手を挙げればできるもの」であり、セカンドオーサー(第二著者)以下の研究は、「周りの力ある研究者に乗っかっただけ」とも言えますからね。
つまり、学振の採用においては、「研究を主導する能力があるか?」が大きく評価されているのではないか?、と僕は睨んでいます(念を押しますが、私見に過ぎません)。
これから研究者として生きて行こうと思うなら、どちらにせよ業績は積み重ねて行くべきです。
まずは自分の研究にきちんと取り組みましょう。
二次審査にまわった人は、次の審査があると言っても既に提出した書類の再審査のため、特に今から何かできることもない状態で結果を待つことになると思います。
その気を紛らわす意味でも研究に集中するのが良いと思います。
そしてこれが重要なのですが、学振以外の研究費補助制度への応募も積極的に行っていきましょう。
学振ほどの権威はありませんし、助成額も下がるものが多いですが、学振以外にも博士課程学生への経済支援事業は結構あります。
募集は各大学ごとになりますが、文科省のフェローシップだったり、JSTの次世代だったり…
修士課程の学生にとっては、こういった支援が充実しているかどうかも博士課程の大学院選びに重要でしょう。
特に文科省は今年度より博士課程学生への経済支援を新設し、最低限の生活費は賄えるような支援の枠を設けました。
他にも、民間の財団が博士課程学生向けの研究費助成事業をやっています。
少しでも補助を受けられるだけで経済的に楽になりますし、何より業績にもなります。
どの業界もそうでしょうけど、業績は雪だるま式に増えていくものです。
最初は小さな業績からスタートすることになろうとも、その業績が認められ一段上の業績を得るチャンスが舞い込み、それをモノにできればさらにより良いチャンスが舞い込む、というのが研究の世界だと思います。
学振の申請のための研究計画書もあることですし、それをうまく使いながらいろんな助成制度にチャレンジしていきましょう。
博士課程進学の前に将来について改めて考えよう
博士課程は修士までと違って、やる気だけではなんともなりません。適性も問われます。
しかし、学振に採用されるか否かは、その適正があるか否かを少しは測るものとなっていますが、採用されたから将来安泰、不採用だから適正なしという訳ではないです。
その能力と覚悟があるかは、採用不採用どちらでもきちんと考えなければなりません。
学振の採用で得られるものは「経済的な安定」と「肩書き」だけです。
当たり前ですが、採用されたことで「研究能力」は上がりませんし、「博士号取得」も確定しません。
採用結果を参考に、将来のことを改めて考えてもらえればと思います。
おしまい
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